なぜ、小児期の喘息の診断とコントロールが重要なのか?
先週は本当に忙しい日が続いていました。喘息診療の知見を日本の先生方に広めるための年に1回のお祭り的な講演会があったのです。5日間に渡り開催され、毎日ドクターが日替わりで講演を行いました。私は、2年連続2回目の登壇となり、開業医では唯一という有り難い選出となりました。このような貴重な機会を頂きました関係者各位の皆様に、深く御礼申し上げます。
さて、講演会の中でもお話しをした皆様にも知ってほしい事をご紹介したいと思います。
『小児期の喘息コントロールが子供の将来の喘息の重症度を左右する可能性がある』
という事です。小児の喘息治療がうまく行かない最大の理由は、小児の喘息治療は治療を受ける本人ではなく、親が治療を受けさせるかどうかを判断する事にあります。喘息で苦しんでいる本人が治療を受けるかどうかを判断できないのです。そして治療を受けさせない親の根底には『薬を使う事が悪だ』というとんでもない考え方があるのです。
これは本当にタチが悪い問題です。子供はなるべく薬を使わないで過ごさせたいという、ある意味宗教的で時代錯誤な考えが根強く残っているかたが現代社会においても意外に多いのです。喘息は症状が落ち着いても、キチンと継続して治療をしないと増悪を繰り返します。そして重症度が上がっていく可能性すらあるのです。その事を何度も伝えても、『症状が無くなったから大丈夫かと思ってやめさせていた。なるべく薬を使わせたくない』などと言います。もう???しかない訳です。薬を使って健やかな日常を維持する事はそんなに悪い事なのでしょうか??高血圧のお年寄りの薬をやめさせますか?やめさせませんよね?なのに子供にはなぜキチンと薬を使わせないのか謎なのです。WEBなどで、『薬に頼らないで喘息を克服!!』などの記事を真に受けないで下さい。お願いだから正しい知識を持って正しい治療を一緒に子供達に届けましょう。子供の将来があなたの決定によって左右されます。
『小児期の喘息コントロールが子供の将来の喘息の重症度を左右する可能性がある』についてですが、以下の図をご覧ください。これは小児喘息の患者さんを対象にした調査です。喘息コントロールが悪い小児喘息患者と、コントロールが良い小児患者の呼吸機能の推移を見ています。コントロールが悪い群は呼吸機能が本来の75%程度までしが発育せず、その後もコントロールの改善が見られない場合は早期に呼吸機能の低下が見られるようになるのです。
重症喘息でコントロールがつきにくいのであれば100歩譲って仕方がない部分があるかもしれません(当院ではそのような事がないように重症者には生物学的製剤の適応を行います)が、親が医療へのアクセスを拒む事によって、子供の将来が悪い方向に変わるなんてことは到底許されません。継続すべき薬は自己判断で中断しないことが大切です。
親が子供には薬を使わないで過ごしてほしいと心のどこかで思っている時に、SNSなどで喘息は薬に頼らないでも克服できる!などのデマの記事を読んでしまうと、都合がいいように受け取って、それが真実!的な思い込みが発生します。
良いも悪いも情報過多社会であり、正しい情報をキチンと見極めることが大事です。