- 2025年7月25日
牛乳アレルギーとは?
乳幼児の食物アレルギーの原因として、牛乳・乳製品が2番目に多いとされています。ちなみに1位は鶏卵です。
牛乳アレルギーの原因となるのは、牛乳に含まれるカゼインとホエイタンパク(αラクトアルブミン・βラクトグロブリン)の2種類の物質です。牛乳アレルギーは6歳までに70%が耐性を持つ、つまり克服するといわれていますが中には遷延することもあります。
詳しくみていきましょう。
牛乳をアレルギー検査項目で調べるとカゼインとαラクトアルブミン・βラクトグロブリンの3種類を一度に調べることになります。よって牛乳の項目で陽性だった場合さらなる詳しい検査が必要になります。詳しい検査が必要な理由は対処法や食べられる食品が異なるからです。ちなみに牛乳の項目で陰性だったとしても、症状から疑わしい場合は個別に調べる必要があります。
・カゼイン陽性:カゼインは牛乳タンパク質の約80%を占める物質です。熱に強くかつ分解されにくく、加熱や発酵された食品でもアレルギー反応が起きるのが特徴です。従って、チーズ、ヨーグルト、クリームなどは基本的に食べることができません。(食べる量の問題のこともあります。また、バターなどのカゼイン含有量が少ない乳製品は量にもよりますが問題なく摂取できることがあります。)特にチーズはカゼイン成分が凝縮されており、牛乳やヨーグルトに比べてカゼインの含有量が多く、少量でも重篤な症状に進展しやすい食品です。使用されているか分からない場合は、成分表示をみて判断するか製造元に確認するようにしましょう。分からなければ避けておくのが無難です。また、「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「発酵乳」などの加工食品にも牛乳が含まれるため、カゼイン陽性の患者さんは食べられません。市販されている牛乳は殺菌する際に加熱しています。方法はいくつかありますが、最も高温で加熱する、超高温瞬間殺菌法(130度2秒の加熱処理)を行っても、カゼインが完全に失活することはありません。(失活率85%という文献があります。)
・αラクトアルブミン・βラクトグロブリン:残りの20%がこの物質です。この物質は加熱にてアレルギー性が失われますが、市販されている超高温瞬間殺菌処理をされた牛乳でアレルギー性が十分に失われているかは不明ですのでこれらに陽性の場合は生乳である「牛乳」、「特別牛乳」、「成分調整牛乳」、「低脂肪牛乳」、「無脂肪牛乳」の5種類と、その他の飲用乳の「加工乳」と「乳飲料」の2種類を避けることになります。尚、成分表示やパッケージを見てもよくわからない場合や不安な場合は摂取を控え、医師にご相談ください。
ちなみに、加工食品などに利用される、乳化剤・乳酸カルシウム・乳酸菌などは乳がつく名称から、乳製品と間違えやすいのですが、牛乳とは関係ありません。乳化剤は卵黄、大豆、牛脂などから作られています。乳酸カルシウム」は化合物の名称です。乳酸菌はただの菌の名称でそれ自体にアレルギー性はありませんが乳酸菌飲料は牛乳をベースにしていたりしますので成分表示をしっかりと確認して下さい。また、乳酸菌といえば整腸剤ですが、種類によっては製造過程でカゼインが含まれてしまうため、種類によっては服用できません。みんな大好きビオフェルミンは基本的に問題なく服用できますが、市販品の『ビオフェルミン止瀉薬』は牛乳成分が含有されているため使用できません。紛らわしいのですが、『病院で処方されるビオフェルミン』『ビオフェルミン下痢止め』『ビオフェルミンS』などは問題なく使用できます。
特定原材料表示について:牛乳は2001年から施行されている食品衛生法によって特定原材料に指定されており、原材料ラベル表示を確認することで牛乳入り加工食品の誤食を防ぐ事が可能となっています。
牛乳アレルギーと診断されたら:牛乳アレルギーは耐性を獲得することが多いため、定期的にIgE値を調べつつ、負荷試験を都度実施することになります。当院では負荷試験が難しいため必要に応じて総合病院をご紹介いたします。
負荷試験実施の目安
- 抗原特異的 IgE 抗体陽性の食物を初めて食べてみたい。
- 明らかな誘発症状を経験してから1年以上経過している。
- 抗原特異的 IgE 抗体価が明らかに低下傾向を示す(必ずしも陰性化する必要はない)。
- 誤食しても症状が出ない経験をした。
- 入園・入学を控えて正確な診断をしたい。