- 2026年6月19日
「私だけは大丈夫」が一番あぶない!高齢のご家族を熱中症から守るために
暑い季節になると、毎年「なんとなくだるい」「食欲がない」といった倦怠感を訴えて受診される高齢の方が増えます。ご本人は熱中症だと思っていないことがほとんどで、「うちは風通しがいいから」「冷房は苦手で」とおっしゃいます。しかし、その思い込みこそが命に関わる危険につながります。今回は、高齢のご家族がいる方に知っておいてほしいポイントをまとめました。
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか
年齢を重ねると、暑さやのどの渇きを感じにくくなります。「まだ大丈夫」と思っているうちに、体の中ではすでに脱水が進んでいることが珍しくありません。さらに汗をかく機能も低下するため、体に熱がこもりやすくなります。つまり、ご本人の「平気」という感覚はあてになりません。これは気合いや我慢の問題ではなく、体の仕組みの変化なので、ご家族が代わりに気を配ってあげる必要があります。
ご家族にはっきり伝えてほしい5つのこと
熱中症について間違った思い込みを持っている高齢の方には、遠慮せずにはっきり伝えてあげてください。
気温だけでなく湿度も大事です。夏は湿度が高く、室温30度以上・湿度60%以上なら風があっても危険です。また気温35度を超える環境では、ハンディファンや扇風機は全く意味がなく、熱風で逆に熱中症のリスクを上げ、肌を傷めることもあります。
「うちは涼しい」と感じているのは、たいていご本人だけです。通り抜ける風が熱風であれば、かえって逆効果になります。
「私だけは大丈夫」という人ほど、脱水で倒れます。自信は予防になりません。
「冷房が嫌いだからつけたくない」と言う方も多いですが、熱中症で入院すれば、病院の中は一日中冷房がついています。
冷房をつけても風邪はひきません。風邪の主な原因は他人からうつるウイルスで、一人で過ごす家の中で冷房をつけても感染源はいません。のどが乾燥していがらっぽくなることはあっても、それで命を落とすことはありません。一方で、脱水症・熱中症は命に関わります。
「熱中症かも?」と思ったら見るべきサイン
ご家族の様子がおかしいと感じたら、次の3点を観察してみてください。
ひとつ目は舌です。脱水・熱中症の方は、舌が明らかにカピカピに乾いていることが多くあります。
ふたつ目は爪です。手の爪は通常ピンク色ですが、親指の爪を軽くつまんで押すと白くなります。健康な方は離すとすぐ色が戻りますが、脱水・熱中症の方は戻るまでに3秒以上かかります。
みっつ目は尿です。トイレの回数が減ったり、尿の色が濃くなったりしていないか確認してください。ビタミン剤を飲んだ後のような濃い色の尿が出ている場合は、脱水のサインです。トイレにまったく行かなくなった場合は、重度の脱水・熱中症が疑われます。
疑わしいときの対応
これらのサインが見られたら、まずOS-1などの経口補水液を飲ませ、冷房の効いた涼しい場所へ移動させてください。ご本人が「大丈夫」と言っても、ここは強めに促してあげることが大切です。意識がはっきりしない、自分で水分が取れない、ぐったりしているといった場合は、ためらわず医療機関を受診してください。
ご家族の小さな変化に気づけるのは、いつもそばにいる皆さんです。この夏も、声をかけ合って元気に乗り切りましょう。
井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。
南州会フロントクリニックグループ一覧
- 三浦メディカルクリニック
- 横浜フロントクリニック
- 東京品川フロントクリニック
- 自由が丘フロントクリニック(2026年10月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 難病指定医(呼吸器)
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)