- 2026年7月6日
手足口病ってどんな病気?首都圏に複数展開する内科・呼吸器科フロントクリニックグループの内科医師が解説!

夏を中心に子どもたちの間で流行する「手足口病」。名前は知っていても、いつまで人にうつるのか、どんな治療をするのか、意外と正確に知られていないことも多い病気です。今回は、手足口病の基本を保護者の方向けにわかりやすく整理してご紹介します。
手足口病とは
手足口病は、コクサッキーウイルスA6・A16やエンテロウイルス71(EV71)などのウイルス感染によって起こる病気です。主に5歳以下の乳幼児に多く見られますが、大人がかかることもあります。名前の通り、口の中・手・足に発疹や水疱ができるのが特徴です。
・潜伏期間(感染してから症状が出るまで):3〜6日程度
・主な症状:発熱(38℃前後)、口の中の水疱・潰瘍、手のひら・足の裏の発疹
・経過:多くは数日〜1週間程度で自然に軽快
発疹・水疱ができやすい場所
口の中にできる水疱は口内炎のようなもので、痛みのために食事や水分を摂りづらくなることがあります。手足の発疹は痛みや痒みを伴わないことも多いですが、見た目の変化に驚かれる保護者の方も少なくありません。

図1:手足口病で発疹・水疱が出やすい代表的な部位
発熱と発疹のタイミングの関係
発熱と発疹・水疱は必ずしも同時に始まるわけではありません。一般的には発熱がやや先行し、その後発疹が出現して発熱よりも長く残るという経過をたどることが多く見られます。

図2:発熱と発疹・水疱のタイミングの目安(発症日を0日とした場合)
| 【ここがポイント】・発熱は発症初期(〜3日目ごろ)に多く、比較的早く治まる傾向・発疹・水疱は発熱と重なる時期に出現し、その後1週間前後残ることがある・発熱を伴わずに発疹のみで経過するケースもあり、個人差が大きい・「熱がない=手足口病ではない」とは言えない点に留意が必要 |
感染経路と、感染力が続く期間
感染経路は「飛沫感染」「接触感染」「糞口感染(便を介した感染)」の3つです。特に注意したいのは、症状が治まった後もしばらく便の中にウイルスが排出され続けるという点です。「発疹が消えた=もう感染しない」というわけではありません。

図3:発症後の感染力の目安(のど・便からのウイルス排出期間)
| 【ここがポイント】・発症後1週間程度が最も感染力が強い時期・のどからのウイルス排出は1〜2週間程度で減少・便からのウイルス排出は2〜4週間、時にそれ以上続くことがある・排便後の手洗いなど、症状が治まった後の衛生管理も大切 |
治療法:基本は対症療法
手足口病には特効的な抗ウイルス薬はなく、治療の中心は症状を和らげる対症療法です。多くは軽症で自然に治りますが、次のような対応が行われます。
・発熱・痛みに対して:解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)
・口内の水疱による食事困難に対して:冷たい・柔らかい・薄味の食事、水分補給の工夫
・皮疹のかゆみに対して:必要に応じて外用薬
・脱水が心配な場合:経口補水、重症時は点滴
ごくまれに、髄膜炎・脳炎などの重い合併症(特にEV71型)を起こすことがあります。高熱が続く、嘔吐を繰り返す、ぼんやりして反応が悪い、手足に力が入らないといった様子がみられる場合は、早めに医療機関を受診してください。
また、発症から1〜2か月ほど経ってから、爪が浮いて剥がれる「爪甲脱落症」がみられることがあります。これは一時的なもので、通常は自然に元に戻ります。
消毒・衛生対策について
手足口病の原因ウイルスは、脂質の膜(エンベロープ)を持たない「非エンベロープウイルス」のため、アルコール消毒だけでは十分な効果が得られません。石鹸による手洗いや、次亜塩素酸ナトリウムでの清拭を組み合わせることが効果的です。
| 消毒・対策方法 | 効果 | 備考 |
| 石鹸による手洗い | ○ 有効 | 物理的な洗い流しが基本かつ最重要 |
| 次亜塩素酸ナトリウム | ○ 有効 | 排泄物処理やドアノブ等の環境清拭に |
| アルコール消毒 | △ 効果は限定的 | エンベロープを持たないウイルスには効きにくい |
| 煮沸消毒 | ○ 有効 | 食器・タオル等に |
登園・登校の目安
手足口病は学校保健安全法上、出席停止が法律で義務づけられている病気ではありません。一般的には、発熱がなく、口の中の水疱による食事摂取の困難がなくなった時点で、登園・登校を再開できる目安とされています。ただし、前述のとおり便を介した感染力はその後も続くため、園や学校の方針も確認しながら、手洗いなどの対策を継続することが望まれます。
まとめ
手足口病は多くの場合、数日〜1週間程度で自然に軽快する病気ですが、「発疹が消えても便からの感染力はしばらく続く」という点は、意外と知られていないポイントです。正しい知識を持って、過度に心配せず、かつ適切な衛生対策を続けることが、ご家族や周囲の方への思いやりにつながります。気になる症状がある場合は、遠慮なく医療機関にご相談ください。
※ 本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状の診断や治療方針の判断に代わるものではありません。心配な症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください
執筆者情報
井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。
南州会フロントクリニックグループ一覧
- 三浦メディカルクリニック
- 横浜フロントクリニック
- 東京品川フロントクリニック
- 自由が丘フロントクリニック(2026年10月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 難病指定医(呼吸器)
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)