- 2020年2月10日
妊娠中でも喘息の治療は必要か?全ては赤ちゃんのために!
今週は妊婦と喘息について書きたいと思います。
みなさん妊娠が分かった瞬間から色々な事が気になりますよね。
タバコやお酒、薬など、大切な赤ちゃんに影響がないか?などなど。
特に薬は非常に大きな問題です。風邪ひいて熱があるのに薬が使えなくて辛いなど様々な悩みを日々外来で伺います。今回、喘息だけど妊娠したら薬はどうしたらいいか?について順にまとめていきたいと思います。
1:なぜ、妊娠中でも喘息の治療は必要か?
題名で書いた通り、全ては赤ちゃんのためにです。
赤ちゃんは母体から酸素と栄養をもらう事で日々成長していきます。お母さんが喘息発作になると、酸素が体内にうまく取り込めずに、赤ちゃんの成長に必要な酸素が足りなくなってしまいます。低酸素状態になった赤ちゃんは発育が遅れたり、発達が上手くいかなくなってしまったり、最悪の場合は流産や胎児脳障害を来す事があります。妊娠しても喘息治療は必ず続けなくてはならず、自己判断での中止は絶対にしてはいけません。
2:吸入ステロイドの安全性について。
1にも記載しましたが、妊娠しても、吸入ステロイドはやめてはいけません。極力薬などを摂取したくない気持ちは凄く良く分かりますが、吸入ステロイドはそもそも全身への影響力はほぼなく、妊婦に使用しても胎児への安全性が高いとされています。どの吸入ステロイド薬も安全性は問題ないと考えられていますが、その中でもパルミコート®︎(ブテゾニド)という吸入薬は最も安全性が高い事が証明されています。また、パルミコート®︎と気管支拡張薬との合剤である、シムビコート®︎も同様であると考えられています。ただし、気管支拡張薬は動悸の副作用があり、妊婦で脈が早くなったり、手が震えたりする場合は、吸入回数を減らしたり、パルミコート®︎に変更する事が大切です。
3:その他の喘息治療薬につていて
経口薬・注射薬は順に説明しますね。
1)経口・点滴ステロイド
妊娠糖尿病・妊娠高血圧症などの兼ね合い(母体への影響)からなるべくなら避けたいところですが、喘息発作を来してしまった場合は、血糖や血圧に注意しながら、胎児への低酸素状態を避けるために積極的に投与すべきです。胎児にとっては低酸素状態になる方がよっぽど重篤になると考えられています。また、経口・点滴ステロイドの直接的作用での胎児への影響はあまりなく、特にプレドニゾロン・メチルプレドニゾロンは胎盤通過性が少なく安全性が高いとされています
2)ロイコトリエン受容体拮抗薬
キプレス®︎やシングレア®︎、オノン®︎といった内服薬は有益性投与と言うことになっています。必要がなければ、なるべく投与を避けるべきとなっていますが、妊娠初期に妊娠が判明する前に内服していたとしても危険性は少ないとされています。
3)テオフィリン製剤
テオロングなどのテオフィリン製剤は中毒域のモニタリングが必要になります。安全域内での使用であれば問題ないですが、注意が必要です。
4)経口β2刺激薬
経口メプチンや経口ホクナリンは動悸などの副作用の観点を注意が必要です。なお、これらの薬剤を使用するくらいなら吸入ステロイドと吸入β2刺激薬の合剤を使用した方が遥かに良いと考えます。
長くなりましたが、兎にも角にも妊娠中や妊娠を計画している喘息の女性の皆さんに言いたいのは、赤ちゃんのために、そして自分のために吸入薬はやめないで!!ということです。妊娠中に咳が止まらないなどの方は早めにご相談ください。