新型コロナウィルス感染症について

こんにちは、世間では新型コロナの流行が懸念されていますね。手洗いなどの感染対策に万全を期して体調管理にお気をつけください。

さて今回は、予告とは違う内容ですが日本環境感染学会から新型コロナの感染の指針第1版(2020年2月13日)が出されましたので、その内容を、原文を引用しつつ皆さんと共有したいと思います。以下に記すものは日々変化して更新されていくものと考えられます。必ず、今後随時更新される最新情報に基づき行動を行ってください。

なお、当院では新型コロナウィルス肺炎の対策として、保健所からの通達に従って診療を行っております。発熱(37.5℃以上)かつ咳や咽頭痛などの呼吸器症状を有する方で、2週間以内に武漢市を含む湖北省への渡航歴があるもしくは、新型コロナウィルス肺炎の発症が疑われる患者様との接触歴がある場合は下記の帰国者・接触者相談センターにまずご連絡をお願いします。 
1:神奈川県 新型コロナウイルス感染症 専用ダイヤル 045-285-0536
2:三浦市にお住まいの方:鎌倉保健福祉事務所三崎センター 046-882-6811
3:横須賀市にお住まいの方:横須賀市保健所 046-822-4308  
感染拡大を防ぐ為に、いきなりの直接受診はせずに上記いずれかに電話で事前にお問い合わせをお願い申し上げます。上記が保健所からの通達ですが、当院では湖北省以外の中国渡航歴のある発熱などの患者様も直接受診はせずにクリニックに電話でまずはお問い合わせください。

1:ウィルスの特徴
ヒトに感染するコロナウイルスは従来、風邪のウィルス4種類と重症急性呼吸器症候群コ ロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の合わせて 6 種類が知られていました。新型コロナウイルス(COVID-19)はこれらとは異なるウイル スであり、主に呼吸器感染を起こし、病原性は MERS や SARS より低いレベルと考えられ ています。中国湖北省において致死率は 2%超という数字が示されていますが、中国湖北省 以外および国外では実際にはそれよりもかなり低い数値となっています。新型コロナウイルスは、飛沫および接触でヒト−ヒト感染を起こすと考えられています が、空気感染は現在のところ否定的です。よって通常はサージカルマスク(一般的なマスク)による飛沫感染予防と接触感染予防で十分と考えますが、痰の吸引や気管挿管などを行う場合はN95という特殊なマスクが必要です。

2:特徴的な症状
新型コロナウイルスは呼吸器系の感染が主体です。ウイルスの主な感染部位によって上気 道炎、気管支炎、および肺炎を発症すると考えられます。本ウイルスに感染した方全員が発症するわけではなく、無症状で経過してウイルスが排除される例も存在すると考えられます。感染者の症状としては、発熱、咳、筋肉痛、倦怠感、呼吸困難などが比較的多くみられ、 頭痛、喀痰、血痰、下痢などを伴う例も認められています。一般的に呼吸困難を認める場合は肺炎を発症しているものと推測されますが、上気道炎の症状が主体であっても肺炎の存在が確認される例や、1 週間以上の上気道炎症状が続いた後に肺炎が出現する例もあります。少数ながらみられる重症例は肺炎を発症していると考えられますが、さらに死亡例では ARDS や敗血症、敗血症性ショックなどの合併が考えられます。 なお、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスク因子ならびに、どの程度、細菌感染症が 合併しやすいかについては、明確なデータは認められません。

3:診断
新型コロナウイルスが患者検体から検出されれば確定診断が付き「確定例」として扱いま す。呼吸器感染症の症状を認め、武漢を含む中国湖北省の滞在歴があっても、ウイルス検査 が行われてない段階では「疑い例」となります。疑い例については、厚生労働省は新型コロ ナウイルスの検査対象を下記のように定めています。

次の(1)〜(4)に該当し、かつ他の感染症又は他の病因によることが明らかでなく、新型コロナウイルス感染症を疑う場合。

(1)発熱または咳などの呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって、新型コ ロナウイルス感染症であると確定したものと濃厚接触があるもの

(2)37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前 14 日以内に中国湖北省に渡航又は 居住していたもの

(3)37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前 14 日以内に中国湖北省に渡航又は 居住していたものと濃厚接触があるもの

(4)発熱、呼吸器症状その他感染症を疑われるような症状のうち、医師が一般に認められ ている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに 特定の感染症と診断することができないと判断し(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第 14 条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当)、新型コロナウイルス感染症の鑑別を要したもの

※濃厚接触とは、次の範囲に該当するものである。
・新型コロナウイルス感染症が疑われるものと同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があったもの。

これらは、現在のところ、湖北省の渡航歴・滞在歴がある人、もしくはその人との接触歴がある人に限定されていますが、流行地域は明らかに拡大しており、私としては2週間以内に中国への渡航歴・滞在歴がある人、もしくはその人との接触歴がある人も注意深い経過観察が必要と考えています。

4:治療
新型コロナウイルス感染症に対して、現在、有効性が証明された治療法はありません。抗 HIV 薬などの投与が有効であったという報告もあり、特にロピナビル/リトナビル については今後さらに治療効果が検証されれば治療薬としての可能性が期待できるものと思われます。現時点における治療の基本は対症療法(解熱剤など)です。肺炎を認める症例などでは、必要に応じて輸液や酸素投与、昇圧剤等の全身管理を行います。細菌性肺炎の合併が考えられる場合は、細菌学的検査の実施とともに抗菌薬の投与が必要と思われます。肺炎例や重症例に対して、副腎皮質ステロイドの投与については、現時点では有効性を示すデータは無く、推奨されません。私としては呼吸不全が重度の場合やサイトカインストームという炎症性物質が体の中を駆け巡っているような状況の場合はステロイドとマクロライド系抗生剤であるジスロマック®︎の投与を検討してもいいのではと個人的には思っています。
なお、現在のところ新型コロナウイルスのワクチンは存在しません。