喘息の治療目標ってなんだ??

喘息の治療目標は大きく2つです。

第一目標:現在の症状のコントロール

第二目標:将来の重症化の回避

当院はこの事を常に意識しながら診療を行います。どちらが欠ける事も喘息診療では許されないのです。順番に解説していきます。

1:現在の症状コントロール。喘息の治療の第一目標である事は間違いありません。喘息症状によって、日常生活や仕事、学習状況に影響を受けてしまったり、夜も眠れなかったりする訳です。当院では、症状を取る事だけを考えるのではなく、症状をコントロールしたその先にある患者様の日常生活の改善まで意識して治療薬の選択を行なっています。

2:将来の重症化の回避。これは第一目標を達成したその先にある長期的な治療目標です。患者様はよく、症状があるかないかだけを気にする方がいます。症状がある時だけを喘息、症状がなくなれば喘息は治癒したと思っているからです。しかし、それは大きな間違いです。特に成人発症の喘息は一生付き合っていかなければなりません。症状がある時だけ薬を使うという、間違った治療を行なっている患者様は、呼吸機能の低下スピードが健常者の人よりも有意に早いことが分かっています。呼吸機能が失われる事でより喘息発作時の症状(咳、息切れなど)が重くなります。つまり、喘息は重症化していくのです。重症化のスピードは非常にゆっくりである為、自身が重症化を自覚出来ることは非常に稀です。患者様自身でその事を自覚するのは10年、20年、30年後になります。ハッキリと自覚出来るようになってから前向きに治療に取り組むよりは、その事を意識して今から治療をしっかりと行なっていくことが何よりも大事です。重症化してからだと、薬自体も増えたり、月1回程度の注射(生物学的抗体製剤)を行わなければならなかったりします。

喘息を『肺の生活習慣病』とおっしゃる呼吸器内科医もいます。高血圧や脂質異常、糖尿病は毎日の薬を欠かさないのに、『肺の生活習慣病』である喘息の治療は何故かサボりがちになる人が多いです。ハッキリと申し上げますが、喘息は自覚症状を伴い、喘息死に至ることもある非常に怖い病気です。今一度、しっかりと喘息治療目標を確認し、将来の重症化を予防する為に日々の治療に取り組んで頂ければと思います。長期的な視点を持ちながら現在を生きること、治療する事が大切です。

子供を持つ親は、子供の20年後は気にするのに、何故か自分の20年後は気にしない方がほとんどです。自分の20年後、今と変わらず元気に過ごせると思っている人が大半なのですが、そんなに甘くありません。子供の将来と同じくらい自分の20年後を気にして下さいね。

子供には『日々の勉強の積み重ねが将来をいい方向に変える』とか言っていませんか?

全くもってその通りだと思います。

『日々の治療の積み重ねが将来をいい方向に変える』のです。