コロナのPCR検査についてと、今、街のかかりつけ医として出来る事。

発熱した場合にコロナ感染症が心配になっておられる方は多いかと思います。日本において発熱し、大きい病院を受診したからと言って必ず新型コロナ感染症の検査をするとは限りません。PCR検査は万能ではありません。乱発すれば精度が下がり、偽陽性(感染していないのにも関わらずPCRで陽性と出る事)、偽陰性(感染しているのにも関わらずPCRで陰性と出る事)が増えてきます。日本では海外とは別の方法をとっています。怪しい人に検査をするという方法です。これを医学的にいうと検査前確率を上げると言います。

昨日からの咽頭痛などの風邪症状の患者様が100人居たとします。全員にコロナのPCR検査をしても、陽性となる率は極めて低い事がわかると思います。何故ならば、咽頭痛などの風邪症状を起こす原因はコロナ以外にも無数にあるからです。また、検査の精度から本来コロナではないにも関わらずコロナ陽性となってしまう方も出てくるでしょう。コロナの可能性が低い集団を検査する事で医療現場が疲弊し、防護服などの医療資源も枯渇していきます。本当に必要なところに医療資源を集中できないことになります。医療崩壊の幕開けです。

そこでどうしたらいいか?答えは簡単です。濃厚接触者や海外渡航歴がある発熱・強い倦怠感や呼吸困難感を伴う発熱・4日以上続く発熱などコロナっぽい人のみを優先的に検査を行うのです。コロナっぽい人のみに検査をする事で、陽性率が飛躍的に上昇し、無駄な検査を行わずに済むのです。そうすれば限られた医療資源で効率的にコロナ感染者を見つける事が出来る様になります。これはフランスでも同様の戦術をとっています。

日本・フランスは、世界と違った戦術をとっているのは確かですが、世界と違うからと言って間違っているという判断にはなりません。今現時点で確実に言えることは大学病院・感染症指定医療機関など日本の最前線の医師・看護師・薬剤師・検査技師・看護助手・医療事務の方々がその戦術のもと踏ん張っています。コロナで命を落とす国民が一人でも減る様に頑張っています。もしかしたら日本もいずれPCR検査を乱発しなければいけない事態になるかもしれません。しかし、そうなった時は医療崩壊している時です。現場で踏ん張っている方々に少しでもお力になれる様に、開業医として出来ることは少ないかもしれませんが、尽力したいと思っています。開業医の私に出来ることはコロナっぽいかどうかの見極め(コロナ っぽい人を検査ができる病院や保健所へ紹介する事と今はコロナ っぽくない人でもハイリスクの人の方の経過を見る事)と、喘息の患者様・COPDの患者様・間質性肺炎の患者様・生活習慣病の患者様が、万に一つ感染したとしてもコロナと戦えるため、戦えぬくための万全の体調を整えておく事にあります。

前者に関しては院内での対面診療を行った場合に、当院のかかりつけの患者様にも影響が出る可能性がある為、近日中にオンライン診療システムを稼働させ、患者様が院内に入る事なく在宅のまま診療を行い、診療後も当院が遠隔で経過観察できるスマホアプリシステムを用いて毎日の体温や状態を患者様にスマホアプリに入力してもらい、その状況を当院のカルテシステムで追いかけていき、経過が問題ないか、コロナ の疑いで病院を受診した方がいいかを遠隔のまま判断していく事になります。

後者に関しては、感染してしまった後は、最前線の医療スタッフに任せる他ありませんが、かかりつけ医が持病のコントロールを普段からしっかりと行うことで、感染者の重症化するリスクを下げることにつながります。重症の患者様が減れば最前線の医療スタッフのマンパワー不足解消につながり医療崩壊を防ぐ一助になると思います。この2つががかかりつけ医として今求められている事なのです。