焼肉のトング問題を考える。

2011年4月、焼き肉チェーン店「焼き肉酒家えびす」の6店舗で利用者181人が腸管出血性大腸菌による食中毒を発症し、富山県内の4人を含む5人が死亡した事件を覚えておられますか?この事件は、管理が全くできていない牛肉をユッケにして提供したことが原因とされています。それ以降、ユッケの提供が禁じられたのはご存じの通りです。さて、この事件以降、焼肉店ではトングの導入が進みましたよね?でもね、このトング。使い方を間違うと全く意味がないのはご存じですか?

焼肉屋さんで生肉が出てくるとこちらのトングを使用してくださいって言われますよね?そのトング。正しく使えていますか?

まず、生肉をトングで掴み網に乗せますよね。焼けてきたらトングでひっくり返して、反対側を焼きます。

問題はここからです。

焼けたお肉を生肉を触ったトングで自分のお皿や、同席者のお皿に配ったりしていませんか?コレね絶対にダメですよ。焼けたお肉は自分のお箸で取るか、生肉を触っていない取り分け専用のトングを作って、そのトングで取り分けてください。

生肉を触ったトングの表面には肉の表面についていた細菌が付着してしまいます。焼けたお肉は細菌が死滅していますが、取り分ける際に生肉を掴んだトングを使用してしまうと肉の表面に生きた細菌が付着してしまうため意味がないのです。

焼肉で焼けたお肉を取り分けてあげる行為は迷惑行為なんです。

自分の箸で取り分けるのは気が引けるから、トングで、、、って思ってる人、ダメです。焼肉は取り分けないでください。

焼きすぎて食べころが過ぎそうになったお肉が目の前にあったとしても、慌てて汚染されたトングで取り分けてしまうのではなくて、食べ頃だからどうぞと声をかけるだけにしてください。良かれと思って、生肉に使用したトングで取り分けるようなことは絶対にしないで下さい。焼肉奉行は迷惑奉行です。

実際に、それが原因と思われる細菌性腸炎の患者様が年間数人ほどと少ないですが当院にも来院されます。問診にて細菌性腸炎が疑われる場合は、採血・採尿検査等を行い、場合によっては入院加療が必要となりますのでご注意ください。焼肉喫食後の胃腸炎症状は細菌性の可能性が高く絶対に侮らないで頂きたいのです。