- 2025年6月9日
高血圧の治療を始めるとずっと薬を飲まなくてはいけないから飲みたくありません?!
外来をしていると治療が必要な方に血圧の薬を始めた方がいいですよ!とお伝えすると100回に90回くらいの確率で『高血圧の治療を始めるとずっと薬を飲まなくてはいけないから飲みたくありません』と言われます。
そんな方に是非お伝えしたいことがあります。
それは血圧の薬は確かに体質などで中止できない人もいますが、中止できないほとんどの理由は、生活習慣の改善が出来ないからと言う事です。そもそも高血圧は生活習慣病と言われる病気です。塩分の取りすぎ、体重増加、運動不足の3つが主な原因です。薬を始めても、この3つの生活習慣を改善できれば多くの方が中止出来ます(体質や特殊な疾患の方を除く)。では、なぜ相談を受けたときに薬を開始しましょうとお伝えすることが多いのでしょうか。
1:血圧が正常になるまで改善できるくらい生活習慣を是正できる人はほとんどいないと言うことが経験上分かっているから。(減薬はできても中止には至らないことがほとんど。)
2:仮に生活習慣をすぐに見直す事ができたとしても、血圧が正常まで下がり切るのに時間がかかるから。
この2つですね。ほとんどの問題は1です。どのクリニックでも、高血圧にしろ糖尿病にしろ生活習慣をどのように改めるべきかを医師ないし看護師から説明されますよね。確かに、その説明通りに行い生活を改め、薬が中止できる人は一定数おりますが、稀です。ホントに稀です。ほとんどの人が生活を少し見直しはするものの、血圧の改善(正常値)に至るまで生活習慣を是正できないのが実情です。当院では塩分表やレシピ集をお渡しすることもあります。最初は頑張るものの、しばらくするとまた塩分が濃くなって行ったりするのです。運動も最初だけで継続できる人はほとんどいません。
また、仮に頑張ります!と患者さんが言ったとしても、生活習慣改善の結果が出始めるのはかなり先になりますので、その間、血圧が高いのを薬を使って落としておく必要があります。
私たちも、不必要な薬を漫然と出すわけではありません。不要になれば当然、減薬・中止します。薬に頼らずにと言う気持ちもわかりますが、治療が遅れ、動脈硬化が進行してしまい、脳梗塞・心筋梗塞などにならないためにも、治療適応の場合はまずは治療を開始しつつ、生活習慣を見直し、薬の減薬・中止を目指すことが最適解なのです。
文責:医療法人社団南州会 理事長 井上哲兵
経歴
2009年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学研修医、同大学呼吸器内科、国立病院機構静岡医療センターにて研鑽を積み、2019年4月医療法人社団南州会理事長就任。同年8月三浦メディカルクリニック開院。2024年5月横浜フロントクリニック開院。
資格・役職
医学博士・日本内科学会認定内科医・日本呼吸器学会呼吸器専門医・日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本医師会認定産業医・厚生労働省認定臨床研修指導医・身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
難病法における難病指定医(呼吸器)・緩和ケア研修会修了医