禁煙ってなぜするのか?将来が現在になる事を忘れないで!

本日は、呼吸器専門医が全国から集結する講演会での発表があるため休診させて頂いております。

診療の際に思うことがあります。年を取るという当たり前の事を皆さん忘れていませんか?当然今年に生まれた人は20年後に20歳を迎えますよね。50歳の人は20年後に70歳になる訳です。何を馬鹿な事をと思う人がいるかと思います。でも本当にその事を忘れている人が、外来で90%を占めると言っても言い過ぎではないと思います。例えば、子供に勉強しなさい!って言いますよね。また、社会のルールを身につけさせようとしますよね?なぜですか?

それはその子供の20年後に役立つ事が分かっているからです。為になることが分かっているからです。今を精一杯努力して生き抜く事が将来を左右することを大人は知っているからです。

でもね、皆さん自分の子供の事には一生懸命になるのですが、自身のことになるとサッパリの人が多いのです。時は平等に皆に等しく、歳を取らせます。子供が20歳になれば、当然親も20歳歳をとるのです。50歳の人は70歳になります。将来の健康を守る為には今の努力がものを言うのです。タバコをやめた方が良いと伝えるのは、現在の咳や痰を減らす為でもありますが、将来の呼吸能力を下げないようにし、日常生活が今と変わらない状況を作るためのものでもあります。将来どのような老後を迎えたいですか?この問いに多くの人が、その理想を外来で口にします。今と変わらず身の回りのことは全て自分でこなす。時々、家族と旅行に行って羽を伸ばす。などなど。

しかし喫煙者の多くの方に伝えたいのは、喫煙を続けている限りそれは無理という事です。

喫煙は、肺癌、舌癌、喉頭癌、食道癌、胃癌の発症率を高めます。喘息やCOPD、間質性肺炎といった肺の様々な病気を引き起こし重症化させます。重症化した場合は、生物学的製剤や抗繊維化薬などの非常に高価な薬をずっと使用なくてはならなくなったり、在宅酸素療法が必要になったりします。また、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血の発症リスクを高めます。

大体、このような事を外来で伝えると、分かっちゃいるけどやめられないと患者さんは口にします。もうね、お決まりパターンです。仕事のストレスが溜まって気がくるいそう、唯一の楽しみがなくなる!集中力が出ない!などなど、外来でそれぞれの言葉で思いを訴えて来られます。

このようにおっしゃる方はそれが事実誤認であることをまず最初に理解しないと決して禁煙できません。なぜ人がタバコを吸うのか?。それはただただ単純にニコチンの血中濃度低下によって引き起こされる禁断症状から回復しようとする為です。ニコチン切れになると(あるいは血中のニコチン濃度が低下してくると)喫煙者はストレスを感じ、ソワソワして、集中力が低下してきます。その状態からタバコを吸うと10秒程度でニコチンの血中濃度が急上昇して禁断症状が一瞬にして消え去ります。するとストレスがスッとなくなる感じがしたり、集中力が増したり、体が軽くなったり、倦怠感が消えたりする錯覚を起こす訳です。

現在、禁煙外来で使う内服薬はファイザーが製造を中止しており日本全国のクリニックを探しても手に入りません。パッチ製剤はありますが、禁煙成功率が低すぎるのと副反応的の観点からお勧めできません。つまり気合いしかないのです。

私は患者さんの病気を治す事だけが医師の仕事だとは思っていません。目の前にいる患者さんを将来、病気にさせない事も大切な仕事だと思っています。当院でお会いした患者さんの将来の健康を守るためであれば、時に厳しいことを申し上げる事があります。決して、説教じみた事をしたい訳ではありません。将来の健康のためのキッカケになるような外来診療ができればと日々心がけております。禁煙のキッカケが欲しい方はぜひ、ご来院ください。このブログの文章からは想像できないくらいの優しさを持ってお待ちしております。