北里大学がイベルメクチンは新型コロナ陽性患者において、PCR陰性化までの期間短縮には寄与しないことを報告しました。

さて、少し古い論文について取り上げますが(と言っても今年の5月の論文です)、イベルメクチンの産みの親である北里大学がイベルメクチンとコロナについてのを報告を出しました。二重盲検比較試験と言う最も厳しい条件下でイベルメクチン群と偽薬群を比べています。二重盲検というのは医者も患者も、イベルメクチンを飲んでいるのか、偽薬を飲んでいるのかわからない状態で経過を見ているということです。心理的影響など様々な影響を考えうる限り排除して行う試験で、最も価値が高い試験の一つとされています。2020年8月から2021年10月まで新型コロナに感染した20歳以上の中等症までの患者248人を対象に行われ、イベルメクチンを1回服用するイベルメクチン群と偽薬を服用する偽薬群に分けて、PCR検査で陰性となるまでの期間を比較しています。解析に至った、イベルメクチン群(200 ug/kg 単回投与:112名)と偽薬群(109名)において、どちらの群も約14日で陰性となり、陰性となるまでの期間に差はなく、イベルメクチンはPCR陰性化までの時間を短縮する効果はなかったと結論づけています。また、年齢別、糖尿病、肺炎、喫煙の有無に分けても調査が行われましたが、両群で有意な差は見られませんでした。また患者登録日から15日目までイベルメクチン群(17.9%)と偽薬群(21.7%)では、同程度の割合で症状悪化がみられたと併せて報告しています。

この報告はあくまで主要評価項目(試験をする上で最も大事な目的とされた項目)がPCR陰性化までの期間であり、症状の改善・消失を診ている訳ではありませんPCRはご存知の通り、病原性を失ったウィルスの遺伝子断片でも陽性になります。『発症後の持続するPCR陽性=感染性や病原性が持続している』訳ではないというのは従来からの見解ですから、なんとも歯切れが悪い主要評価項目の設定かなと思います。大事なのは症状の改善・消失である訳ですから、、、。

しかし、この試験を含めて興和が報告した臨床試験の結果などを総合して考えるとやはり、イベルメクチンは新型コロナには効果が無いというのが、極普通の臨床感覚を持つ医師の見解かなと思います。ちなみに私は、イベルメクチン推奨派でも完全否定派でもありません。『イベルメクチンがコロナに有効だ!という、信頼に足る臨床試験結果が信頼に足る医学雑誌に掲載されたなら推奨派になります』というスタンスです。有効性が確立していない代物を医師個人の感覚だけで患者さんに投与する事はありません。当院ではイベルメクチンのお問合せを頂いても全てお断りしています。