小児の喘息と生物学的製剤について

当院には、小児の重症喘息の患者さんが多く来院されます。その多くは吸入薬の調整でうまくいく事が多いですが、中にはゾレア、ヌーカラ、デュピクセントといった生物学的製剤を使用しないとコントロールできない患者さんもいらっしゃいます。生物学的製剤は、ものものしい名称ですが、これらの薬剤は副作用がほぼなく極めて安全性が高い上に、ほぼ喘息症状が消失します。常識を覆すありえないくらい有効性が高い製剤です。

なぜ小児の喘息は成人よりも厳格なコントロールが必要で、特に重症小児喘息には生物学的製剤が必要なのでしょうか?

喘息のコントロールが悪いと、肺が十分に成長しない事が分かっています。健康な人を100とすると70くらいしか成長できないのです。十分に成長できなかった肺は、予備能力が乏しく、年齢を重ねていくと早期に呼吸不全に至ってしまう可能性が出てきてしまうのです。

また、喘息だからと言って何かを諦めることがあってはならないというのも理由の一つです。喘息だから、かけっこで負けてもいいのでしょうか?喘息だから運動部への入部を諦めていいのでしょうか?小さい頃の喘息のコントロール不良が原因で成人した時に重症化してしまい子供を授かる事を諦めてもいいのでしょうか?答えは全てNOです。子供だからこそ、厳格なコントロールが必要です。子供に喘息の苦しさを我慢させるてしまう多くの原因は親の理解不足です。喘息だから苦しくてもしょうがないなんてことはあってはならないのです。

小児に適応がある生物学的製剤のそれぞれの特徴を簡単にご紹介いたします。

ゾレア:ハウスダストやダニ、スギ花粉、ヒノキ花粉などのアレルギー物質が原因で喘息が悪化してしまう患者さんに奏功します。喘息以外にも、スギ花粉症、蕁麻疹にも効果があります。ちなみに、スギ花粉症に対するゾレアはハッキリと言って超著効します!

ヌーカラ:好酸球性重症喘息の患者さんに適応があります。喘息の一つの原因である白血球の中の好酸球を死滅させる事で、極めて高い治療効果を得ることができます。なお、好酸球は寄生虫に感染した際に活躍する細胞ですが、現在日本では寄生虫は一部の地域のみしか報告がないため、血中に全くなくても問題ない細胞の一つです。

デュピクセント:好酸球性副鼻腔炎合併喘息や重症アトピー合併喘息の患者さんに極めて高い効果を認めます。好酸球性副鼻腔炎のせいで、生まれてから匂い・味を一切感じたことがないようなケースや、アトピーで肌がずっと痒くて常に全身を掻きむしっているような重症アトピーのケースも、スッキリと治療する事ができます。

いいとこ尽くしの薬剤ですが、実際に投与するには細かい適応基準があるため、全員に投与出来るわけではありませんし、扱えるクリニックは呼吸器診療の研鑽を積んだ呼吸器専門医が在籍するクリニックになります。

お近くでお困りの患者さんがいらっしゃいましたらぜひ当院をご紹介ください。

話は変わりますが、最近楽しみな事が一つできました。今まで、逗子エリアに呼吸器の専門クリニックが全くありませんでした。受診先がなく、重症喘息の方は当院に受診してくださる方が多くいらっしゃいましたが、今年の6月についに逗子にも呼吸器クリニックができるそうです。ちなみに全く面識がなく一方的な思いです。実際にクリニックができましたら連携のためご挨拶をさせて頂きたいなと勝手に思っています。