新型コロナ『エリス』が流行中!コロナはただの風邪って本気で言ってます?ワクチン未接種者及び1年以上最終接種から経過している方ははガチで注意が必要!

今週は久しぶりにまともな医療記事を書きたいと思います。

今年の6月頃からコロナが流行しているのはご存じの通りだと思います。決してコロナは明けてはいません!

ここ最近、新型コロナはオミクロン株から派生した新たな変異株であるEG.5、通称『エリス株』に置き換わり始めています。私が抱いているエリス株の印象は、エリス株が流行し始めてからか肺炎が明らかに多いという事です。当院は、新型コロナの咳に特化した後遺症外来を設置しており、1都3県から患者さんがほぼほぼ毎日いらっしゃいます。(全員隔離期間を終えた患者さんです)

後遺症外来では、胸部単純写真(レントゲン)に加えて胸部CTで精密に検査を行います。エリス株より前は肺炎を認める患者さんは極めて少なかったのですが、エリス株に置き換わりが進んできている現在、今までにないくらいの数のコロナ肺炎が見つかっています。その多くは、ワクチン未接種者ないし、2回のみの接種で終了している方です。感染隔離期間を終えて1週から2週経っても咳が全く治らないと訴え、CTを撮影すると全肺野に肺炎像が広がっており、正直、このC Tを見ると『ゾッ』とします。ちなみに当院に来る肺炎患者さんは、ほぼほぼ10代から20代です。

若年者はコロナ肺炎になりにくいとの定説があります。肺炎になりにくいのはなりにくいのかも知れませんが、継続的なワクチン接種を行なっていない事と、感染対策が緩んだ事で感染者数が増加し一定数、肺炎に進展する人が散見されているのだろうと思います。

また、エリスの肺炎は、エリス以前のコロナ肺炎よりも肺炎像の影(医療用語で言う所の浸潤影)が濃い印象があります。通常、ウィルス性肺炎はすりガラス陰影と言って、黒いキャンパスに白の色鉛筆でサーっと色を塗ったような影が特徴なのですが、エリスはなぜか陰影が濃い部分があるように思います。

エリスはクレヨンでベタッと塗ったかのような濃さ(浸潤影と表現してもOKなくらいの色の濃さ)なんです。濃い浸潤影の場合、肺の既存構造が破壊され繊維化を残す事もあるので注意が必要です。適切な投薬によって肺炎は良くなったが、肺の繊維化(肺炎の痕跡)によって咳、痰、息切れが半永久的に残存してしまう可能性も考えられます。もちろんコロナ感染後の細菌性肺炎の合併の可能性もありますが、採血で炎症反応が乏しく、この派手な陰影が全て細菌感染とは考えにくいのです。

なお当院には武漢株(原始株)の肺炎になってしまい在宅酸素(24時間ずっと自宅でも酸素を吸わないと苦しくなってしまう状態。)が導入になった患者さんも数名ですがいらっしゃいます。エリス株がそこまでの病原性があるとは今のところはまだ思えませんが、CTの肺炎像を見ていると、人によっては十分にありうると、私見ですが思ってしまいます。

当院で高齢者の肺炎を全く見ないのは、ワクチン接種をキッチリと行なっている人が多く肺炎まで悪化する人が少ない事、そして、高齢者で肺炎に進展してしまった方は、隔離期間中に状態が悪化し、救急搬送になっている事が理由だろうと思います。

コロナはただの風邪になるのはまだ先のようです。早く、『コロナは風邪レベルになりました』と言いたい!けど、まだまだ言えない。これが実情です。今冬は、昨年よりももっとインフルもコロナも爆発的に増加する事が懸念されます。しっかりと感染対策を行なって、ワクチンを希望する人はささっと接種して備えてくださいね。ワクチンの希望がないならないでもいいのですが、感染対策は今一度見直してください。

海外を例に感染対策は意味ないと言う人が時々いますが、日本は感染対策の徹底で死亡者数をしっかりと抑え込んでいるのは統計上明らかです。米国では100万人当たりの死亡者数は3420人ですが、感染対策を頑張っている日本は100万人当たりの死者数は580人です。米国レベルで死亡者数が出ても、米国と同じように病院に入院できなくても仕方ない、クリニックで検査すらできなくても仕方ない、全て自己責任!として割り切って頂けるのであればいいかも知れません。日本には米国の緩い感染対策が世界のゴールドスタンダードで、日本は異常だ!と主張する人がいますが、実際に感染者数が増加して医療へのアクセスができなくなり始めるとそれはそれで問題だと主張し始める。これは矛盾でしかない訳です。米国並みの緩さは求めるが米国並みの死亡者数、米国並みの医療アクセスの悪さになる事は受け入れられない。これね、はっきり言って両方満たすのは無理ですからー。