待望のRSウィルスワクチン、アレックスビー®︎が発売されます。

現状、成人のRSウィルス感染によってかかる医療費は非常に高額であると推定されています。今後の医療費増大を少しでも防ぎたいと考えた厚生労働省が、各製薬会社に働きかけ開発を急がせていたRSウィルスワクチンが2024年1月15日(月)についに発売になります。英国のグラクソスミスクライン(GSK)が開発したワクチンです。RSウィルス感染症とこのワクチンのポイントをまとめておきます。

RSウィルス感染症について

①RSウィルスは2歳までにほぼ100%の乳幼児が少なくとも1度は感染するとされていますが、一度感染しても何度も感染を起こします。

②生後6ヶ月までに感染すると重症化する可能性が高くなる事がわかっています。

③子供だけではなくて大人も感染しますが、大抵の大人は感冒症状で終わること多いとされています。

ただし高齢者の場合や喘息・COPD・間質性肺炎・気管支拡張症などの肺疾患がある患者や、心疾患患者、重症糖尿病患者、各種癌患者、免疫不全状態の患者(免疫抑制剤使用者・抗がん剤使用者)などの場合は、たとえRS感染であっても重症化することがわかっています。

⑤重症化とは、RSウィルスによる肺炎の場合もありますが、多くは原疾患の増悪や二次感染が原因です。原疾患の増悪とは喘息やCOPDのコントロール悪化を指します。咳が止まらなくなったり、息切れが強くなって酸素が必要になり入院になる可能性があります。二次感染とはRSウィルス感染後に細菌性肺炎を起こす事をさします。噛み砕きますとRS感染を起こすと他の細菌(バイキン)に感染しやすくなってしまうという事です。

⑥60歳以上の日本人の場合、RS感染は年間約70万件、入院は約6万件、死亡者数は4500人と推定されています。

⑦インフルエンザ関連性肺炎とRSウィルス関連性肺炎を比較すると死亡率は約7%程度でほぼ同等ですが、入院期間はインフルエンザ約15日に対してRSは約30日と有意差を持ってRSの方が長くなる事が分かっています。高齢者の場合、入院期間が長くなると全身の筋力・嚥下機能・認知機能などがドンドン低下してしまい、日常生活に戻れなくなったり、場合によっては寝たきりになってしまったりします。肺炎は治ったものの全身状態の悪化により食事が出来なくなり自宅に戻れなくなってしまう可能性がある訳です。尚、新型コロナと比較試験は現状ありません。

⑧RSウィルスに感染すると入院の可能性が、健康な人と比べて喘息患者は2から3.6倍、COPD患者は3.2から13.4倍、糖尿病患者は2.4から11.4倍、冠動脈疾患患者(心筋梗塞や狭心症など)は3.7から7.0倍、心不全患者は4から33.2倍であると報告されています。

RSウィルスワクチン:アレックスビー®︎について

①接種対象は60歳以上

②発症予防の有効性は82.58%であり、重症化予防効果は94.1%でした。

③副反応として接種部位に疼痛などが出たり、疲労感などが数日出ることがわかっています。

④1回接種して大体2から3年くらい効果が続くと予想されています。

どのような患者さんに接種を検討いただきたいか

①60歳以上で呼吸器疾患・心疾患・糖尿病・免疫不全疾患などの持病がある方

②60歳以上で子供(特に乳幼児)と関わる可能性がある方や子供と関わる職業の方

なぜ乳幼児と関わる場合は注意が必要なのでしょうか?最初に書きましたが、乳幼児は2歳までにほぼ100%初感染を起こします。そしてそこから何度も何度も感染します。保育園・幼稚園ではRSを移し、移されを繰り返す場合だってある訳です。

具体例としてAからDまでをあげてみますね。

A)共働きの娘夫婦の子供(孫)が普段、保育園に行っていたとします。保育園で熱を出しました。迎えの電話がかかってきましたが、娘夫婦のどちらも迎えに行けません。迎えと日中の預かりを頼まれました。

B)年末年始やお盆休みなどで孫を含めた子供家族が自宅にやってきます。

C)普段から孫たちと同居しています。

D)保育園・幼稚園や学童で子供たちと触れ合うような職業です。

当てはまる方はいらっしゃいましたでしょうか。

60歳以上であってもちょっとした風邪症状だけで済む可能性も勿論ありますが、インフルエンザと同等かそれ以上の可能性で高齢者や持病がある方は重症化します。その可能性が少しでも下がるのであれば、接種をした方が望ましい方には当院は推奨致します。

最後に接種料金ですが、残念ながら今のところ非常に高額です。今後下がってくる可能性もありますが、現状は税別27000円となります。約2から3年程度効果が持続すると推定されているため、年10000から15000円、月800円から1300円、1日26円から45円でRSを予防するということになります。1日にして考えるとそこまででは無いように感じますが、一回で支払うには決して気軽に勧められる料金ではありません。メリット・デメリットをよく考え、少しでも重症化リスクを下げたいと考える方、基礎疾患が既に重篤であり重症化リスクを少しでも下げなければいけない方は積極的にご検討頂きたいと思います。