• 2024年6月16日

ぜんそくと診断されたら読む本①

2024年6月24日発売予定の『ぜんそくと診断されたら読む本』の一節をご紹介致します。

まずは導入の部分を。今後もちょっとずつ重要な部分をUPしていきますね。

はじめに

ぜんそくを放っておくといつか大変なことになるかもしれません。

気道の炎症などを抑える吸入ステロイド薬の普及により、ぜんそくはしっかりと治療をすればもはや死に至る病ではなくなりました。この画期的な薬が広まったことにより、多くの患者がぜんそくのことを忘れるほど元気に過ごせるようになったのです。実際に1990年代、ぜんそくは年間5000人以上の患者が命を落とすほど怖い病気の一つでしたが、吸入ステロイド薬が普及し始めた2000年以降、死者数は年々減少しています(「令和3年〔2021〕 人口動態統計」)。
しかしその一方で、薬によって比較的簡単に咳が止まってしまうことから「ぜんそくが治った」と思い込み、自己判断で治療を中断してしまう患者が後を絶ちません。 

ぜんそくは慢性疾患ですから一度発症すると完全に治癒することはほぼありません。ぜんそく患者は常に気道で炎症が起きている状態です。吸入ステロイド薬によって一時的に炎症が抑えられても根本的な治癒とはならないため、治療を途中で中断することは極めて危険であり、重症化のリスクを高めることにつながります。

また、放置していると、気づいたときには肺への空気の通り道である気道内で狭窄(アレルギー物質などの刺激によって気管支を取り囲む筋肉が収縮したり、気管支の粘膜が腫れたりして気管支の内腔が狭くなること)が起きて、息をするのも苦しくなります。発作の程度や頻度が悪化するだけでなく、発作が収まったあとも少しの動作をするだけでつらいといった日々を過ごすことになってしまうのです。
 
だからこそ、たとえ薬を服用し一時的に咳が収まって楽になったとしても、医師から一度でもぜんそくと診断されたことがあれば、長期的な視点でぜんそくと上手に付き合っていく必要があるのです。専門医による正確な診断を受けて正しい知識を身に付け、適切な治療を続けていけば、長期的にも大きく生活の質を向上させることができます。

私は呼吸器内科の医師として、多くのぜんそく患者と向き合ってきました。2019年にクリニックを設立して以降は、ぜんそくはもちろん風邪や気管支炎、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな呼吸器疾患の治療を行っています。ぜんそくについては、軽症のものから大学病院や総合病院でなければ治療が難しい重症のものまで幅広く対応しています。本書では、ぜんそくが起こるメカニズムをはじめとした基礎知識、治療薬や治療法の選択方法、ぜんそくの合併症などについて分かりやすく解説します。さらに、発作を抑えるための生活習慣、日常生活での注意点や予防策など、ぜんそくを自分でコントロールする方法についても詳しく紹介しています。
 
ぜんそく治療で最も重要なことは、患者が病気を正しく理解し、適切な治療をしっかりと継続していくことです。それにより、ぜんそくを重症化させずに健康な生活を手に入れることが可能となります。本書が、ぜんそく患者の治療継続のサポートとなり、より健康な日々を送る手助けとなることを心より願っています。

以上が導入部分になります。わかって頂けたかと思いますが、意外に真面目に書いているのです。

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