• 2023年12月12日

若年者の薬物乱用、いわゆるOD(オーディー:Over Doseの略)について考える。

昨今、若年者の薬物乱用、いわゆるOD(オーディー:Over Doseの略)が問題になっています。厚生労働省の調査によれば高校生の60人に1人がODを経験していると報告されています。

精神科医療施設の患者において、市販薬のOD事例が2012年から2020年にかけて約6倍にも増えています。ODを繰り返し薬物依存症になってしまった方の56%が市販薬なのです。『薬局などで手軽に買える薬だからなんとなく大丈夫!』って思っている人、大間違えです。

国立精神・神経医療研究センターの報告によれば、市販薬のODを行ってしまう人の特徴が明らかになりました。

1:男性より女性が多い

2:睡眠時間が短い、インターネット使用時間が長い

3:学校が楽しくないと感じている。相談できる友達がいないと感じている

4:親に相談できないと感じている。大人不在の時間が多い。家族と夕食をとる機会が少ない

5:コロナで自粛生活が長く、ストレスを抱えた

これらの特徴は孤立・孤独を感じやすい状況と言えるのではないでしょうか。インターネットが普及して対面でのやり取りをしなくても済むようになり、便利になった反面、孤独・孤立化が急速に進んでしまったのだと私見ですが思います。

そして、なぜ、薬物乱用(OD)をしてしまうのかについても『教育と医学』に2014年に報告されています。

1:気持ちよくなりたい

2:パフォーマンスを上げたい

3:みんな使っているから

4:気分を変えたい

だそうです。手軽に遊び感覚で手を出してしまう子供も多いようです。3はかなり危険ですよね。SNSを通して知り合う人であっても、その子供にとっては『みんな』になってしまう訳です。我々の『みんな』は対面で会った事・話した事がある知り合いの人を『みんな』と呼ぶわけです。世代感覚の差でしょうか。

違う論文によれば子供たちはこんな考え・思いもあるようです。

1:ひどい精神状態から解放されたかったから(72.6%)

2:死にたかったから(66.7%)

3:どれ程、絶望の中にいるかを周りに示したかったから(43.9%)

4:誰かに本当に愛されているかを確認したかったから(41.2%)

簡単にまとめると、

・SNS等で簡単に情報が取れてしまう事から興味が出て手軽るに使用してしまうパターン

・社会的孤立、家庭内孤独が原因で現実逃避のために使用してしまうパターン

の2つに集約されると思います。万が一、ご家族が薬物乱用をするような事があったら、薬物乱用をしたことだけを咎めるのではなく、なぜ薬物乱用をしてしまったかを話し合う必要があります。乱用に至ってしまった本人だけに責任がある訳ではありません。親が用意する環境がそうさせてしまった可能性がある事を忘れないでください。

乱用が問題になっている薬物についても最後に軽く触れたいと思います。主に『咳止め』『抗アレルギー剤』です。

1:デキストロメトルファン

常用量であればなんら問題ありませんが、乱用に至ると幻覚作用が出てきます。海外では暴行や殺人そして自殺にまで至ってしまった例も数多くある。

2:ジフェンヒドラミン

抗アレルギー剤や眠剤として市販されている。国内でも急性中毒症や死亡例が報告されている。

3:総合感冒薬(リン酸コデイン・カフェイン・抗ヒスタミン・アセトアミノフェン配合薬)

リン酸コデインによる幻覚作用が抗ヒスタミン剤によって一段と増強することで乱用・依存に繋がる事が報告されている。急性アセトアミノフェン中毒も問題。

用法容量を守って使用する分にはなんら問題はありません。ただし、喘息患者の3の使用については主治医と事前に相談しておく事が大事。喘息患者さんが3の使い方を間違えると、喘息発作が重症化したり、場合によっては呼吸停止に至ってしまうことがあります。

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