- 2023年5月31日
- 2023年6月4日
タバコの吸いすぎで起きるCOPDって知っていますか?
今更ながらCOPD(シーオーピーディー:日本語名は慢性閉塞性肺疾患)について書きたいと思います。
COPDという病気はご存知でしょうか?タバコをたくさん吸っている人は誰しもが発症する可能性があります。咳、痰、息切れが主な症状です。進行すると酸素を吸いながらの生活をする事になるかもしれない怖い病気です。歌丸師匠がこの病気でお亡くなりなったことを覚えておりますでしょうか。
では、どれくらいタバコを吸うとCOPDになってしまうのでしょうか?
喫煙指数にPack -Years(パック-イヤーズ)という指標があります。1日のタバコの箱数×喫煙年数で表すもので、1日1箱の喫煙を20年間続けた “20 Pack -Years(1pack×20 Years)”の人(例:20歳から40歳まで1日1箱)で約20%、1日1箱の喫煙を60年続けた“60 Pack -Years(1pack×60Years)”の人(例:20歳から80歳まで1日1箱)で約70%が発症すると報告されています。当院でCOPDの診断になるのは60歳以上の方が多いですが、もちろん1日5箱喫煙してしまい、50代前半と若くして診断がついた方もいらっしゃいます。
ちなみに肺は再生臓器ではないため、一度機能を失ってしまった場合、禁煙したとしても元通りに肺機能を回復させることは出来ません。例えば、現在60歳で、20歳~50歳まで1日に20~40本、毎日喫煙し、50歳を過ぎてからは禁煙していたとしても、20歳~50歳までの30年間で傷つけられた肺の機能が、禁煙によって回復するということはないという事です。未だに都市伝説である、禁煙後5年で肺はキレイになって元通りになると信じている方もいます。そんなに都合よくはいきません。
COPDかも?って心配になられた方に、質問票で可能性を見極めることがある程度可能なので試してみてください。(下に載せておきますが、表示されない場合は『COPDチェックリストダウンロード』の表示をポチッとしてみてください。)
この質問票に引っかかる人は今すぐにでも、当院あるいはお近くの呼吸器内科を受診された方がいいですね。
また、家族に50歳以上で若い時からタバコを吸っていて、最近、咳や痰、息切れが気になる人はいませんか?また、50歳以上で若い時からタバコを吸っていて、やたら風邪引いたって言っている人はいませんか?家族で心配な方がいる場合もすぐに受診させてくださいね。
受診を家族が勧めても嫌がる人はほぼこう言います。『咳や痰はただの風邪だ!』『息切れは年のせいだ!』このように言って、タバコのせいだと認めたがらないようにします。そのような場合は下の質問票をさせて、受診を促してみてください。
COPDを診断するには画像検査(レントゲン検査やCT検査)と呼吸機能検査(吸ったり吐いたりする検査。)が必要です。定期的に検査を繰り返して評価をしていきます。
診断がついた人は吸入薬を中心に加療が開始されます。
尚、COPDが疑われる人及び診断された人は、初診時は勿論ですが年1回のCT検査を受けて頂く事を当院ではお勧めしています(当院ではというか呼吸器内科医であれば誰でも知っている基礎知識です。)。当院をかかりつけにしておられる患者さんはほぼ全例年1回のCT検査を受けております。それはCOPDの患者さんは肺癌になりやすいからなんです。ちなみに胸部レントゲン写真だけでは長径1cm以下の極初期の肺がんは見落とされる可能性が高いと言われています。心臓と肺が重なる場所などに癌が出来てしまった場合は、呼吸器専門医や放射線科診断専門医が診ても診断できない場合もあります。確実に診断を付けるにはやはりCTが必要なんです。当院でCTをとって肺癌と診断したケースの中に他院でレントゲンを撮っていて、ずっと『問題なし』と言われていた!という患者様も相当数いらっしゃいます。
COPDの患者さんで進行した肺癌に至ってしまった場合、その後の治療の選択肢が狭くなったり、手術療法を行うにしてもリスクが上昇してしまうのです。
当院においても50歳以上の重喫煙者で2週間以上続く長引く咳や息切れの患者さんはCT撮影を初診時に行いますが、初診で肺癌と診断される例が月1から2回程度あります。少なく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、医療従事者ならこれがいかに高頻度かがわかるハズです。気になる方はご相談くださいね。