- 2024年6月22日
ぜんそくと診断されたら読む本②
放置されやすいぜんそく
多くの人は咳が長引くぐらいで、すぐに病院を受診しようとは思わないものです。
「咳が続くな……。また風邪かな」と思い込み、たいていの場合、そのままにしています。しかし、長引く咳というのは、そんなに単純ではありません。一般的な成人が頻繁に風邪をひいて咳が止まらないというのは、実は非常にまれなことです。 もし月に1回、あるいは2週間に1回のペースで風邪をひいたかな?と思える状況があれば、 それは風邪ではないと考えるほうが妥当です。特に2週間から3週間以上、咳が長引く場合はなんらかの呼吸器疾患を疑うべきなのです。
実際に、次のような段階を経てようやく、私のクリニックにたどり着く患者が非常に多くいます。
ある20代後半の男性は、咳が夜に少し出ていましたが、日中は治まっていたため、それほど気にすることもなく過ごしていたといいます。しかし、気がつけば咳は3週間も続いており、日中も息苦しさを感じるようになっていました。それでも、単に疲れがたまっているのだろう、 風邪が治りきっていないのだと考えただけでした。そんなある夜、状況は一変します。咳が昨日までより一段と強くなりそしてまったく止まらなくなり、横になるのも苦しい状態になったのです。
翌日、慌てて近くの内科に駆け込みました。ところが医師の診断は、風邪が悪化したのだろ うとのことでした。抗生剤や咳止め、痰切りの薬などが処方され、これで楽になれると期待したものの、効果はみられず咳や息苦しさはさらに増していきます。ここまできてようやく、本 当に風邪なのだろうか……と疑問をもちます。「咳」「寝られない」「3週間」などのワードで インターネットを検索すると、肺がん、肺炎、COPD、ぜんそくといった病名が挙がってきました。不安になった彼は、今度は、「呼吸器内科」「専門医」「住んでいるエリア名」などを入れて検索しました。そして、私のクリニックのことを知り受診に来たというわけです。私のほうで詳しい検査をすると、ぜんそくであることが分かりました。しかもそのときにはすでに重度の発作状態に至っており非常につらそうな状態でした。すぐに吸入ステロイド薬を処方し、数日吸入してもらうとみるみる咳が落ち着き、今までの苦しさが嘘のように楽になったといいます。しかし、ぜんそくは慢性疾患のため、これで治療が終わりではありません。現在も継続して通院を続けてもらっています。
このように、多くの人が症状が悪化してからでないと専門医がいる呼吸器内科を受診しないのです。仕事などが忙しく、受診する時間がとれないのも理由の一つです。市販の風邪薬や咳止めを購入して対応する人もいます。しかし、風邪ではないので症状が改善されることはいっ さいなく、時間が経過するうちに、ぜんそくが進行し、激しい咳と呼吸困難に襲われることに なります。痰も絡み、机にもたれかかって前のめりの姿勢をとらなければ眠ることも難しい状 態になってしまいます。ここまで悪化していると、日常生活を送るのも困難になり、QOL(生活の質)の低下が容易に想像できるわけです。