• 2022年8月20日
  • 2022年9月8日

コロナ感染後の咳が止まらない症状について

ここ1ヶ月ほど毎日、三浦市以外の県内各所(横浜、川崎、横須賀、逗子、葉山、小田原、相模原、平塚、海老名など)や、他県(東京都、千葉、埼玉)からも多くの患者様がお見えになります。コロナの療養期間を終えたあと数週間、長い人だと数ヶ月に渡って咳が止まらないと訴える方ばかりです。

コロナ感染後の咳は後遺症ではなく一般的なウィルスでも起きる感染後の咳と同じだという主張があるようですが、それは合ってる一面もありますが、多くの場合違うと思っています。論文になるレベルの知見の蓄積が無い以上、どの意見が正しいとは言えませんが、コロナ感染後の咳の患者さんはCTを撮ると概ね5通りに分かれる印象があります。

コロナ感染後のCT所見

1:何も所見が無い

2:気道壁が顕著に厚くなっている(重症喘息や重喫煙歴がある人のCT所見と同様の所見)

3:間質性肺炎の一種である器質化肺炎

4:繊維化主体の間質性肺炎

5:コロナ肺炎とは全く違う細菌性肺炎

まず、順番に解説します。

1何も所見が無い

CTを撮っても何も所見が無い人は、一般的なウィルス感染後の咳である可能性と、従来のコロナウィルスは喘息との相性が非常に悪い事が知られており、ただ単純に持病の喘息が悪化した可能性のどちらかと考えられます。今まで自分の事を喘息と認識していなかった方も、感染を契機に喘息と診断されることもしばしばあります。

ちなみに、今回のお話とは関係ないのですが、よく患者さんが、私は咳喘息で〜なんておっしゃる方がいますが、咳喘息と喘息は違う疾患になります。咳喘息の診断は時に喘息の診断よりも難しく、初診で会って数分で咳喘息と診断出来ることは呼吸器専門医であってもあり得ないことです。

なお、単純な感染後の咳であれば、一般的な咳止めで止まる可能性がありますが、喘息の悪化であった場合は咳止めではまず止まることはありません。

感染後の咳に対してブロコデやフスコデなどリン酸コデインを含む麻薬性鎮咳薬を処方しているお薬手帳を拝見する事がありますが、万が一、感染後の咳ではなく、喘息発作であった場合は逆効果になってしまう為、そこの見極めは慎重に行う必要があります。場合によっては発作が悪化して救急搬送なんてことも考えられます。

喘息発作に対する麻薬性鎮咳薬は、分泌物(痰など)が出せなくなってしまうことから、厚生労働省において禁忌(絶対に行ってはいけない治療)に指定されています。当院では、そこの見極めを慎重に行うために、呼気NO検査や呼吸機能検査、アレルギー採血などを組み合わせて診断を行なっています。

2:気道壁が顕著に厚くなっている(重症喘息や重喫煙歴がある人のCT所見)

これに該当する人が非常に多いです。気道壁(空気の通り道)が厚いというのは通常、重症喘息や重喫煙歴があるような人の典型的な所見なのですが、コロナ感染後の強い咳の方に同様の所見が最も多いと感じます。経過を丁寧に問診すると短時間(数ヶ月ではなく1から2週間程度)でこのような所見になっている事が予想されます(もちろん、感染前のCTと比較した訳ではないのであくまで予想です。)。熱のピークが過ぎた辺りから咳が出始め、次第に咳が強くなり、そのうち咳が強くて夜も眠れなくなってくるエピソードが典型でしょうか。重度になってくると呼吸機能検査で閉塞性換気障害(息を吐く力が極端に落ちてしまう状況)を認めます。この場合も、咳止めだけではどうにもならず、咳止めだけで治そうとすると数ヶ月単位の時間がかかってくる事が予想されます。(他院で咳止めだけで数ヶ月粘られてしまい、東京から2時間以上かけて当院を受診された方がいらっしゃいました。)検査を行い、適切な処方を行うと数日で咳が改善し始めます。若干の咳はしばらく残るものの、受診前に比べれば相当楽になるとおっしゃって頂けています。

3:間質性肺炎の一種である器質化肺炎

これは、原因が特にない場合や、細菌性肺炎(マイコプラズマ肺炎など)後や薬剤性、放射線治療後などに経験する免疫の暴走が関与していると言われる肺炎の一種です。これはCTを見れば診断は容易でありステロイド内服療法でほぼ根治する事ができます。ステロイド投与以外の治療には反応しないため注意が必要です。

4:繊維化主体の間質性肺炎

このケースは、もともと持病で繊維化主体の間質性肺炎(医療用語でIPFやNSIPと言われるパターン)を持っていた人だと思われます。もちろん、重度のコロナ肺炎を発症してその影響で肺の繊維化を起こしてしまう方もおられると思いますが、ここで申し上げているのはあくまで外来に歩いて来られる人の場合とお考えください。

5:コロナ肺炎とは全く違う細菌性肺炎

採血をとると白血球は1万程度、CRPは4−5程度なんですが、CT画像所見がなんせ派手なんです。コロナ肺炎の画像所見とは全く違う所見であり、判断を間違うことはないくらい違うんですが、まぁ派手。胸部単純写真(レントゲン)でも、誰が見ても分かるくらいの浸潤影を認めます。そして本当に不思議なんですが、コロナ後の強い咳だけを主訴に受診されます。誰か症例数を集めて検討して頂きたいなと思うのですが、熱が無いんです。平熱なんです。微熱すらないんです。呼吸器専門医でなくてもすぐに分かる派手な浸潤影が有って(これのブログはこっそり他院のDr.も読んでいるみたいなので、詳述しますが、一部小葉中心性陰影を認めています。つまり明らかに細菌性肺炎を疑う所見)、炎症反応の上昇があった場合、大抵は38度以上の発熱を認めるのですが、それが無いんです。そして、キノロン系抗生剤(クラビット(ジェネリック名はレボフロキサシン)、グレースビット、ラスビック)で改善を認めることから、明らかに細菌性肺炎です。当院は動線を発熱者と分けることが構造上難しいため、熱がある場合は通常受診が出来ないこともあり、発熱患者さんの数が制限されてしまうため私の経験が少ないだけかも知れませんが、コロナ後は何故か熱が出ない(出にくい?)細菌性肺炎の患者さんが一定数いるということは、絶対に念頭に置いておかなければなりません。(起因菌はなかなか、クリニックということもあり同定はできないところがもどかしいのですが、、、。)

今回はかなり専門的な内容になりましたが、咳で困っている人がいたら教えて上げてください。

まずは近くの内科を受診して胸部単純写真(レントゲン)を撮影してもらうことが大事です。とりあえず、誰が見ても分かるような大きな問題がないかどうかを確認してもらってください。所見がなければ3、4、5は否定されます。とりあえず、これらがなければ慌てなくて大丈夫。2は胸部単純写真(レントゲン)だけでは評価が困難であり正確な判断を下すにはCTが必要になります。しかし、正確にそこが診断できなくてもある程度の治療は呼吸音や咳の強くなるタイミングなどの身体診察と問診でどうにかなるものです。困っていたらまずは近くの内科に相談してみてください!

あと、今はなんとかスタッフが頑張ってくれており対応ができていますがこれ以上、コロナ後遺症外来の患者さんが増えると、かかりつけの患者さんへの待ち時間にさらに影響する可能性があり、後遺症外来だけは予約制にするかもしれません、、、。気軽に受診でき、多くの人に良くなってほしいとは思っていますが、限界が近いのが実情です、、、。

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